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養育費,このままでいいの? 〜新算定表活用のすすめ・その2

2019年4月26日 09:47|つきのみや法律事務所|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

前回のブログでは,養育費の金額を決める際の重要な資料である「算定表」の大きな問題点が,「養育費を支払う側の生活費が多めに考慮され,子どもを育てている側の負担が十分に考慮されていない」ことにあると指摘しました。

今回から数回にわたって,「養育費を支払う側の生活費が多めに考慮されている」という問題の具体的な内容を説明したいと思います。

算定表は,以下の5段階の認定・計算を経て算定された結果を表の形式にしたものです。「義務者」というのは養育費を支払う側,「権利者」というのは養育費を受け取る側のことです。
① 義務者・権利者の基礎収入を認定する。
② 義務者・権利者及び子それぞれの最低生活費を認定する。
③ 義務者・権利者の分担能力の有無を認定する。
④ 子に充てられるべき生活費を認定する。
⑤ 子の生活費を義務者・権利者双方の基礎収入の割合で按分する。

この①の段階にある「基礎収入」は,総収入(手取り収入ではなく,税込みの支払総額)から,公租公課(税金や社会保険料)・職業費・住居費などの「生きていく上で必要な経費」を差し引くことで算出されています。
養育費を支払う側の基礎収入が少なく計算されてしまうと,算定される養育費の金額も少なくなってしまうため,基礎収入を適切に認定することはとても大切です。

しかし,現在の算定表では,養育費を支払う側の「生きていく上で必要な経費」が適切に考慮されているとは言えません。
例えば,公租公課(税金や社会保険料)は,算定表が作られた当時の税率や保険料率に基づいてあてはめが行われていますが,算定表が作られたのは2003年。このブログを書いているのは2019年ですから,15年以上前の税率や保険料率で計算された結果を今も変わらずに使っていることになります。

古いデータに基づいて計算された結果を「適正」と言われても,納得がいきませんよね。

次回は,謎の考慮要素である「職業費」に焦点を当てて説明したいと思います。

(弁護士 伊東結子)
 

養育費,このままでいいの? 〜新算定表活用のすすめ・その1

2018年12月12日 13:21|つきのみや法律事務所|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

前回までのブログでは,養育費の金額を決める際の重要な資料である「算定表」の見方について,夫婦の収入源が何であるかによってケースを分けて説明してきました。
現時点での家庭裁判所の実務(家庭裁判所でどのように養育費を決めているか)が分かったところで,今回からは,現在の算定表の問題点を解説していこうと思います。
その上で,それらの問題点を可能な限りクリアした「新算定表」(日本弁護士連合会が2016年11月に発表した新しい算定表)をご紹介したいと思います。

 現在の算定表で養育費を計算した時,ほとんどの方は,「こんな金額じゃ,子どもを育てられるわけない!」と思うのではないでしょうか。私もそう思います。
では,なぜ,そんな金額が算定されることになるのでしょうか。

法律上,養育費の支払い義務は,「子どもを育てるのに必要な全ての費用を負担する義務」ではありません。
養育費の支払い義務は,「生活保持義務」=自分の生活を維持するのと同程度の生活を子どもにも維持させる義務 であるとされています。
養育費の支払い義務を負う親(子どもとは一緒に暮らさない親)にも,その親自身の生活があり,それぞれの収入に見合った生活費が必ずかかります。養育費は,養育費の支払い義務を負う親自身にかかる生活費を考慮した上で,親の生活レベルと同程度の生活レベルを子どもに保障しましょう,という考え方に基づいて計算されるのです。

現代の子育てには,習い事や塾代,携帯電話代…。本当にいろいろな費用がかかりますよね。
けれど,残念ながら,養育費の支払いは,子どもを育てるのに必要な費用の全額を保障するために行われるのではなく,養育費の支払い義務を負う親自身の生活費を考慮した上で,親の生活レベルと同程度の生活レベルを子どもに保障するために行われるものなのです。
養育費の支払い義務を負う親自身が生活できなくなってしまっては,養育費の支払いが止まってしまうことになりますから,親の生活レベルや親自身の生活費が考慮されるのはやむを得ないことです。

では,現在の養育費の算定(算定表)において,「養育費の支払い義務を負う親自身の生活費」や「親の生活レベル」は,適切に考慮されているのでしょうか。
現在の算定表は,ここに大きな問題点があります。
養育費を支払う側の生活費が多めに考慮され,子どもを育てている側の負担が十分に考慮されていない。これが現在の算定表の大きな問題点です。

次回以降,この問題点をかみ砕いて説明していこうと思います。

(弁護士 伊東結子)

養育費はどうやって決めるの?・その5

2018年10月26日 10:48|つきのみや法律事務所|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

前回のブログでは,養育費の金額を決める際の重要な資料である「算定表」の見方について,夫婦のいずれか(もしくは両方)が年金生活者の場合を取り上げて具体的な説明をしました。
今回のブログでは,夫婦のいずれか(もしくは両方)が無職(無収入)の場合について,算定表の見方(「年収」の考え方)を詳しく説明します。

 ※算定表で養育費を計算するにあたって必要になるデータや,算定表における「義務者」「権利者」の意味,算定表の縦軸・横軸の数字へのあてはめについては,前回までのブログをご参照ください。

夫婦のいずれか(もしくは両方)に収入がない場合は,収入がないことの理由によって「年収」の考え方が異なります。以下では,無収入の理由別に「年収」の考え方を説明します。

1 子育て中で働けない
育児のために働くことができない方で,子どもがまだ乳幼児という場合は,年収はゼロと考えて養育費を算定します。
子どもが小学生以上になると,「子育て中で働いていないので年収はゼロ」という取扱いは難しくなります。これは,養育費の算定における「年収」は,実際の年収額だけでなく,「稼働能力」を考慮することになるためです。「稼働能力」については,詳しくは次の項目で説明しますが,子どもが小学生以上になると,子育て中で働いていないという方であっても,パート程度の収入(年収100万円程度)を得る能力はあるものとして,養育費の算定が行われることになるのが一般的です。

2 求職中で収入がない
養育費の算定を行う時点ではまだ職が決まっていないため収入がないという場合は,養育費の算定における年収をゼロとは考えません。働いて収入を得る能力(これを「稼働能力」と言います)があるのであれば,働いた場合に得られる年収の見込み額を,養育費の算定における年収と仮定することになります。
具体的には,①直近2〜3年の収入資料(給与明細など)から年収の平均値を計算したり,②それまでの職歴を参考にしたり,③賃金についての統計(賃金センサス)から性別や年齢・学歴に見合った平均的な賃金を導き出したりします。

3 ケガや病気で働けない
ケガや病気で働けず,養育費の算定を行う時点では復職できていないため収入がないという場合は,そのケガや病気による休職が一時的なものであり,復職が確実に見込めるのであれば,復職した際の収入を養育費の算定における年収と仮定することになります。
ケガや病気が重く,復職の見込みが確実ではないという場合は,傷病手当など,養育費算定の時点での収入を基礎に計算せざるをえません。こういった場合は,復職後に改めて養育費の増額を求めることになります。

夫(もしくは妻)に収入がないからといって,養育費の支払い義務が必ずゼロになるわけではありません。ぜひ,あきらめずに一度ご相談ください。

次回は,日本弁護士連合会が2016年11月に発表した新しい算定表(いわゆる「新算定表」)について説明する予定です。

(弁護士 伊東結子)

養育費はどうやって決めるの?・その4

2018年9月13日 15:53|つきのみや法律事務所|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

前回のブログでは,養育費の金額を決める際の重要な資料である「算定表」の見方について,夫婦のいずれか(もしくは両方)が自営業者の場合を取り上げて具体的な説明をしました。
今回のブログでは,夫婦のいずれか(もしくは両方)が年金生活者の場合について,算定表の見方を詳しく説明します。 

これまでのブログにも記載しましたが,算定表で養育費を計算するにあたっては,次のデータが必要です。
(1)子どもの人数,年齢
(2)夫婦それぞれの職業(例:会社員,自営業)
(3)夫婦それぞれの年収(税引き前の支払総額)
また,以下の記事を読む際には,算定表がお手元にあると分かりやすいと思います。
※算定表は,東京家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/)。

また,養育費を支払うことになる側(離婚後,子どもと離れて暮らすことになる側)が「義務者」,養育費をもらうことになる側(離婚後,子どもと一緒に暮らすことになる側)が「権利者」ですので,算定表の縦軸・横軸に記載された「年収」は,義務者・権利者のそれぞれの年収を当てはめて見ていくことになるというのも,これまでのブログでご説明したとおりです。

夫婦のいずれか(もしくは両方)が年金生活者である場合は,便宜上,算定表の「給与」の欄に記載された数字を参照することになっています。
この時に注意したいのが,年金の支払総額(税引き前の年収)をそのまま算定表にあてはめてはならないということです。

実は,算定表を用いた給与所得者の養育費の計算では,給与所得の2割が「職業費」として使われているという前提が存在しています。
「職業費」というのは,収入を得るために必要な経費のことで,例えば,サラリーマンのスーツ代や交通費,仕事に必要な知識を得るための書籍代や同僚との懇親費などが「職業費」に当たります。
算定表を用いた養育費の計算では,給与所得者は,給与所得のうち「職業費」として支出しなければならない金額(給与所得の2割)は養育費の支払いには回せないものとして考慮されているのです。
※給与所得の2割もの金額を「職業費」として考慮する必要があるのかという問題はあり,この問題意識が新たな算定表の作成へとつながっていきます。新算定表については別の機会にご説明します。

年金生活者の場合,収入を得るための経費は存在しませんので,算定表の「給与」の欄に記載された数字を便宜上参照するにあたっては,「職業費」として考慮されてしまう年収の2割を,あらかじめ年収に加算しておく必要があります。
具体的には,「年金の支払総額(税引き前の年収)÷0.8」で計算した額を,算定表の「給与」の欄に記載された数字にあてはめることになります。

こうして算定表の縦軸・横軸の数字を確定し,そこから表内にたどっていき,交差した点の属する金額帯が養育費の月額の目安となります。

次回は,夫婦の一方(もしくは両方)が無職の場合について,算定表の見方を詳しく説明する予定です。

(弁護士 伊東結子)
 

養育費はどうやって決めるの?・その3

2018年6月13日 16:38|つきのみや法律事務所|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

 前回のブログでは,養育費の金額を決める際の重要な資料である「算定表」の見方について,夫婦の収入が「給料」である場合(会社員・アルバイトなど)を取り上げて具体的な説明をしました。
今回のブログでは,夫婦のいずれか(もしくは両方)が自営業者の場合について,算定表の見方を詳しく説明します。

これまでのブログにも記載しましたが,算定表で養育費を計算するにあたっては,次のデータが必要です。
(1)子どもの人数,年齢
(2)夫婦それぞれの職業(例:会社員,自営業)
(3)夫婦それぞれの年収(税引き前の支払総額)
また,以下の記事を読む際には,算定表がお手元にあると分かりやすいと思います。
※算定表は,東京家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/)。

夫婦のいずれか(もしくは両方)が自営業者である場合,算定表の「自営」の欄に記載された数字を参照します。
前回のブログにも記載したとおり,養育費を支払うことになる側(離婚後,子どもと離れて暮らすことになる側)が「義務者」,養育費をもらうことになる側(離婚後,子どもと一緒に暮らすことになる側)が「権利者」ですので,算定表の縦軸・横軸に記載された「年収」は,義務者・権利者のそれぞれの年収を当てはめて見ていくことになります。

自営業者の「年収」は,確定申告書の控えを資料にして把握することになります。自営業者の総収入は,確定申告書の「課税される所得金額」であって,売上金額そのものではありません。また,税法上控除されたもののうち,現実に支出されていない費用(例:青色申告控除)については,「課税される所得金額」に加算して総収入を認定することになります。
具体的には,自営業者の総収入は,確定申告書の「所得金額」(確定申告書B表の⑨の金額)から「社会保険料控除」(同表⑫の金額)のみを控除し,「青色申告特別控除」(65万円)を加算して認定することになります。
 自営業者の総収入=確定申告書B表の⑨の金額-同表⑫の金額+65万円
※「+65万円」をするのは,青色申告特別控除を受けている場合のみです。

こうして算定表の縦軸・横軸の数字を確定し,そこから表内にたどっていき,交差した点の属する金額帯が養育費の月額の目安となります。

算定表によって簡易計算される養育費の月額は,あくまでも「目安」であるということは,前回のブログでご説明したとおりです。
また,夫婦の一方が自営業者である場合,総収入の正確性(例えば「経費を実際より多く計上して課税対象額を減らしている」等)が問題となることがあります。そういった場合にどのような主張が可能となるかはケースによって異なりますので,詳しくはご相談ください。

次回は,夫婦の一方(もしくは両方)が年金受給者の場合について,算定表の見方を詳しく説明する予定です。
★養育費の算定については,「無職の場合は?」「新算定表って何?」といったテーマについて,連続して取り上げていく予定です。

(弁護士 伊東結子)

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